修了者の声
VOICE OF ALUMNI

修了者からのメッセージ

写真 氏名:門野 拓史
入学年:平成22年
修了年月:平成25年3月
現在の職種:富山県職員(地方公務員)

法科大学院に入学するまで

 まず、私が、金沢大学法科大学院に入学し司法試験を受験しようと思った経緯について話したいと思います。私は、中学生のころから社会のため人のために役立つ仕事がしたいと漠然と思っていました。そうしたときに、法律を使い、人のために役立てる弁護士という仕事に興味を持ちました。そして、私は、大学の法学部で4年間法律を学びました。大学在学中には、大学での講義に加えて、予備校で司法試験に向けての勉強もしていました。大学4年間法律の勉強をしてきたので、法科大学院は既修コースへ進学したいと思い、様々な法科大学院の既修コースを受験しました。その中でいくつかの法科大学院の既修コースは合格していましたが、金沢大学法科大学院については、未修コースのみの合格でした。私の地元は富山県で、将来的には北陸で働きたいと思っていたので、地域に根付いた法曹の育成に力を入れていた金沢大学法科大学院に魅力を感じ、未修コースでしたが金沢大学法科大学院を選択しました。また、金沢大学法科大学院は少人数で大規模な法科大学院よりは教員との距離が近いという点も選択した要因の一つといえます。

法科大学院での生活

 法科大学院へ入学してからは、法律の勉強に打ち込む毎日でした。日々、授業の予習復習を行い、仲間とゼミを開いて答案練習なども行いました。大学の近くに下宿していたため、夜遅くまで自習室で勉強していました。勉強は基本的に一人でするものですが、同じ志を持った仲間と法律の議論をし、切磋琢磨することで、一人で勉強するよりも何倍も理解が深まったと思います。そういった意味では、法科大学院で仲間と共に勉強する価値はあると思います。

法科大学院を修了後

 法科大学院を修了してからは、5月の司法試験に向けて在学中と変わらず大学の自習室で勉強に励んでいました。直前期は、新しいものには手を出さず、今まで自分がやってきた問題集を何度も復習しました。 そして、司法試験本番を迎えました。司法試験受験後は、通常なら不合格になった場合のことを考え、司法試験の勉強を継続していくと思います。しかし、私は、2回目以降の受験は考えていませんでした。その理由は、法科大学院修了後、何年も勉強のみに打ち込むためには、家族からの経済的援助が不可欠ですが、それが受けられない状況にあったからというのが一つの理由です。しかし、それ以上に、2回目、3回目の方が合格率の低い今の司法試験の現状を見ると、このまま勉強を続けても合格する保障はありませんし、仮に3回とも受験し、そのすべてが不合格だった場合を考えると、その後の自分の人生にとってあまりにもリスクが高すぎると判断したことが一番大きな理由です。私は、実際に司法試験を受けてみて、現状の自分と試験合格のための能力との差を強く感じたため、このまま来年も受験したとしても合格する見込はないと思いました。今まで、司法試験に合格し弁護士になることのみを目標として頑張ってきたため、それを諦めることは、とても悔しく辛い思いでしたが、人生において諦めるという決断も必要であるかと思います。
 そして、私は次に何をすればよいのか考えました。私の原点に立ち返って考えてみると弁護士になりたいと思ったのが、社会のため人のために役立つ仕事がしたいという思いからだったので、公務員なら行政の側から社会や人のためになる仕事ができるのはないかと思い、公務員試験の受験を決意しました。法曹を目指していた者として、法律に携わる仕事がしたいとの思いもありましが、社会のため人のために働くという意味においては、法曹であっても公務員であっても、私の職業観念に合致していると思いました。
公務員試験は主に6月から始まるため、司法試験が終わってからすぐに準備を始めなければなりません。しかし、私の場合は、司法試験が終わった後も過酷な試験から解放されたとの思いから、1週間以上は何も手につきませんでした。結局、公務員試験の勉強を始めたのは、試験の2週間前からでした。試験勉強の期間が短いということもあって、要領よく過去問や問題集を中心に勉強しました。幸いにも、公務員試験にも法律科目があるため、司法試験で勉強してきた知識が役に立ちました。私は、国税専門官、国家一般職、地方上級(富山県庁)を受験し、国税専門官と地方上級の試験で最終合格をすることができました。法律を含む専門試験の配点が高い国税専門官や裁判所事務官、地方上級の試験は法科大学院修了生にとっては、受験しやすい試験であると思います。
 結果的には、司法試験は不合格となり、公務員の道に進むことにしましたが、法科大学院に進学したことは決して後悔はしていません。むしろ法科大学院での生活があったからこそ、今の私があると思います。法科大学院での勉強を通じて学んだ法律の専門的知識や事実を収集して把握し、適切に評価する能力などの法的論理的思考力は、法曹でなくても、社会に出てから役立つものだと思います。

現在

 現在は、富山県庁の土木部で経理を担当しています。経理というと今まで勉強してきた法律とは一見無縁のように思えますが、様々な契約書等の書類を目にすることが多いので、今までの勉強が全くの無駄というわけではないと思います。行政が予算を使い事業を行うためには、様々な法律に基づいて行われるので、経理という仕事を通して、行政の中でのお金の流れを知り、実際に法律に基づいて行政は動いているということを始めて実感できました。
土木という分野は今までの私の人生の中で関わりのなかった分野ですが、県全体の事業の中で1番多くの予算がついており、私たちの生活には欠かすことができない様々な事業が行われています。そのような重要な分野である土木の経理を任せられているということで責任も大きいですが、県全体のために仕事ができているという点においてはとてもやりがいを持って、仕事に取り組むことでき、充実した毎日を過ごしています。

法科大学院への進学を考えている方へ

 法科大学院に進学を考えている皆さんは、もちろん法曹三者となって自分の夢を実現したいと思っているはずです。しかし、現在の試験制度上すべての人が試験に合格できるとは限りません。そうした状況でも、法科大学院で学んだことは社会に出ても必ず役に立つと思うので、是非皆さんには、頑張っていただきたいと思います、健闘を祈ります。