修了者の声
VOICE OF ALUMNI

修了者からのメッセージ

写真 氏名:渡辺 伸子
入学年:平成19年
修了年月:平成22年3月
現在の職種:弁護士

 私は、金沢大学法科大学院を修了し、現在は、出身地富山市の個人法律事務所で勤務弁護士をしています。一般民事、国選刑事、家事や破産など日々多くの事件を経験しています。現在、富山県の弁護士は100人を超え、うち女性は1割ほどです。

 さて、私が大学院に入学したのは三十代半ばを過ぎてからです。
それ以前は、まず大学新卒で地元市役所に入って数年働き、夫の転勤を機に退職後、社会保険労務士事務所で人事労務事務、製造業の中小企業で事務職、専業主婦などをしてきました。
法科大学院に入ろうと思ったのは、専門的な知識を身につけ、それを活かせるような仕事に就きたいと思ったからです。それまでの職場では定型的な事務作業をすることが多かったのですが、いつもと違うことが起きると、基本的な知識や思考方法がないため自分で考えるということができず、情けなく感じていました。それで、自分の核となるような知識、思考方法を身につけたいと思いました。そして、純粋に学術的な勉強よりも実務的な勉強の方が合っていると思い、法科大学院を受験することにしたのです。金沢を選んだのは、地元で通学可能だからというのが、正直、当時の選択の一番の理由でした。しかし、入学して金沢大学法科大学院の指導内容や特色が分かってくると、在学中も修了した後も、ここで学べてとても良かったと思うようになりました。

 私は法学部卒ではありましたが、卒業から十数年経ち、うろ覚えの知識さえ残っていませんでした。法科大学院に入るまで身近で弁護士と接したこともなく、法曹は遠い世界で、司法試験は大それたもののように感じていました。 このように法律学習経験が全くないのと変わらないレベルからスタートしましたが、金沢大学法科大学院の指導は、結果的に司法試験に合格できるレベルまで引き上げてくれました。私は、司法試験受験予備校は、直前模試などを除いて利用していません。大学院の授業や課題を消化するのは、質・量共、私にとって大変でしたが、とても有益でした。私のように家庭を持っている学生や、他学部から未修で入った人が同期にも何人かいましたが、学習面で違いはありません。

 それ以外の良い点の一つとして、やはり少人数で学生同士や教授陣との距離が近い点があると思います。
中には内気な学生もいると思いますが、気兼ねなく先生に質問できますし、他の学生の質問で待たされるということも少ないです。先生方の自主ゼミも行われていて、私もよく出席しましたが、そこでも少人数で熱心に教えてもらいました。学生同士でもよくゼミを組んで勉強しました。自習室は学生一人一人に決まった席が割り振られており、遅い時間でも朝早くでも、集中して勉強できました。
また、少人数なので同期以外の先輩後輩とも繋がりができ、決して人間関係が狭いということはないし、修習生や弁護士になった後の人脈にもつながる関係だと思います。
後に修習生になって、学生数が多い大学院を出た人に様子を聞くと、学生同士でライバル視し合って殺伐とした雰囲気だったという話を聞いたこともあります。司法試験はストレスの多い試験なので仕方ない面があるかもしれませんが、大変な試験だからこそ、励まし合ってみんなで頑張れると心強いです。

 そして、地元北陸三県の弁護士会の支援があるのも地方の大学院ならではだと思います。各弁護士会の受入れにより、エクスターンシップで、弁護士事務所で2週間、指導弁護士に密着して実務を見ることができました。
それ以外にも、特に地元金沢弁護士会の方々が、様々な機会に指導に来て下さっていました。学生は積極的に、わからない論点や論文答案作成の注意点、勉強の悩みまで質問していました。実際に弁護士に接すると学生としてはやる気も出るし、実務の話は興味深いものばかりです。
最近は、弁護士の増加により司法試験合格後の就職活動も厳しいですが、このような地元弁護士会と大学院とのつながり、そして、その中で築いた個々の学生と弁護士との関係は、修了後の就職活動にも役立つと思います。私が司法試験合格後に、まず就職の相談に行ったのも、エクスターンシップで指導を受けた先生のところで、地元の事情を詳しく教えてもらいました。北陸以外で働きたい場合も、紹介を受けることなどは十分期待できると思います。

 このような大学院生活を経て、司法試験に合格し、今は弁護士として研鑽する毎日です。実務で必要な知識や経験は厖大で、気が遠くなるような思いになるときもありますが、金沢大学法科大学院で一心に学んだ時のことを想い出すとまた頑張ろうと思えます。法律という、自分の思考の核となる道具を学ばせてくれた金沢大学法科大学院に感謝しています。