教育EDUCATION
金沢大学版「到達目標」
1.「法科大学院における共通的な到達目標」とは
法科大学院制度の創設以来、各法科大学院は、法曹養成教育の重要なプロセスを担う中核的な教育機関として、それぞれ創意工夫をこらして教育を行い、また、その教育をより充実したものとするよう、努力を重ねてきました。しかしながら、法科大学院修了生(司法修習生を含む)の中には、法律基本科目等に関する基礎的な知識・理解や法的思考能力が十分身に付いていない者が散見されるとの指摘がなされ、また、法科大学院によってその教育内容が不統一であるとの指摘もなされていました。
これを受けて、法科大学院修了者が、いずれの法科大学院における学修を経ても、共通に到達すべき目標を明らかにしようとして2010年に策定されたのが、「共通的な到達目標」です。これに基づいて、各法科大学院が適切な到達目標を設定することにより、法科大学院を修了し法務博士の学位を得た者が、将来法曹となるにふさわしい法律学の学識を確実に修得していることを保証することができるようになることが期待されています。
2.共通的な到達目標策定の基本的な考え方
「共通的な到達目標」は、法科大学院において修得すべき学習内容・水準に関する共通のミニマム・スタンダード、すなわち最低限度の到達目標であり、すべての法科大学院修了生が、共通に修得すべき学習内容・水準を示すという意味での「到達目標」にとどまります。したがって、この到達目標を満たせばそれで十分であるというわけではなく、各法科大学院においては、このような到達目標を達成させることを当然の前提として、それぞれの教育理念を踏まえた創意工夫によって、より深く掘り下げた、また発展的な学習内容についても、その教育課程に取り込んでいくことが強く期待されています。
共通的な到達目標が公表されると、学生のみなさんはそこに示された項目を修得しさえすれば足りると考えるのではないかとの懸念も示されましたが、それで司法試験合格に十分な知識・能力を習得したとは決していえるものではありません。また、「共通的な到達目標」は、単に基本的な知識の修得のみを求めるものではなく、そのような基本的な知識を踏まえて、法的に思考し判断する能力の修得を重視するものであることに注意が必要です。
3.金沢大学版「到達目標」について
上述のように、各法科大学院が、「共通的な到達目標」よりも高い到達目標を設定し、そのような到達目標に則して単位認定や修了判定を行うことが強く期待されています。それは、各法科大学院が、どのような理念に基づいてどのような法曹を養成しようとするのか、そのためにどのような到達目標を設定するかを、それぞれ判断し、それに則って教育を行うべきものであるからです。
これを受けて、金沢大学法科大学院も、「共通的な到達目標」を基礎に、その内容を独自に再構成した「到達目標」を作成することになりました。平成23年度以降、本法科大学院では、金沢大学版「到達目標」に即して、これに示された項目の理解度・到達度を意識しつつ、学生の皆さんにもシラバスやレジュメに各回の講義と項目の関連を明確に提示した上で授業を行い、期末試験等を行うことが、教員間で合意されています。この金沢大学版「到達目標」は毎年改訂されており、常に直近の法律改正や判例を取り入れた内容となっています。
項目の内容は、各項目の分党の記号により4つに大別されます。
◎ 「地域に根差した法曹教育」という本研究科の理念に沿った到達目標
○ 「共通的な到達目標」において提示され、授業で扱う項目
☆ 金沢大学法科大学院独自の基準で設定された、プラスアルファの「到達目標」
△ 「共通的な到達目標」に提示されているが、カリキュラムの関係から専ら学生諸君の自学自習に任せざるを得ない項目
いずれにしても、金沢大学版「到達目標」は、本法科大学院としての最低レベルの到達目標であることに変わりがないことに留意して、常により深く、より高度な学習を心がけてください。