入学するまで

　高校卒業後、地元福井から東京の大学に進学した僕は、順風満帆なキャンパス・ライフを開始しました。ところが、弁護士になることを夢見て学業に励んだのはわずか数か月、いつしか学業そっちのけで大好きだった音楽活動に没頭し、気づけば司法試験合格の夢は遠のいていました。
　その後、何とか大学は卒業したものの、就職もできず、一流企業で働く友人たちの姿をよそめに、背中を丸めて福井に帰りました。
　一度レールを外れた人間が軌道修正を行うのは容易ではありません。アルバイトをしながら自堕落な日々を悶々と送っていた僕は、一発逆転してどん底の生活から這い上がるため、自分の夢に再挑戦しようと決意しました。
　こうして僕は、金沢大学法科大学院の入学試験を受け、社会人等の優先合格枠のおかげもあってか何とか合格し、３０歳目前にしてようやくレールに戻ることができました。

在学中の生活

　金沢大学法科大学院のクラスメイトは、大学卒業後にストレートで入学した人、会社を辞め一念発起して入学した人、お子さんを育てる傍ら弁護士を目指して入学した人、僕のように弁護士になる夢を諦めきれずに入学した人など、バックグラウンドも年齢層も様々でした。
　ストレートで入学した人とそうでない人（何かしらブランクがあったり、社会人経験があったりする人）の割合は半々くらいであったように思います。そのため、ブランクがあって３０歳目前で入学した僕でも、気後れせずに勉強に励むことができました。
　また、一学年の人数が少数であったため、先生方との距離が近く、夜遅くに質問に伺っても快く対応してくださったり、ときには食事に連れて行ってくださったりと、公私にわたり大変お世話になりました。
　さらに、図書館や自習室を土日も含めて２４時間利用することができ、夜型人間だった僕にとってはとてもありがたく、２３～２４時ころまで自習室で勉強していることが多かったように思います。
　このような恵まれた環境の中で勉強に励み、楽しいことも辛いことも含めて多くの経験をしながら、３回目の受験で何とか司法試験に合格することができました。

福井での就職

　合格後は地元の福井で司法修習を行い、そのまま福井市内の法律事務所に就職して、弁護士としての第一歩を踏み出しました。
　ただでさえ合格者が増加して就職難と言われていた中で、３０代半ばでようやく司法試験に合格した僕がスムーズに就職できたのは、金沢大学法科大学院の実務家教員の先生に後押ししていただけたこと、福井には相性さえ合えば新人弁護士を雇いたいと考えている法律事務所が少なからずあると思われることといった理由が大きかったと思います。
　また、福井では、事務所の垣根を越えて、先輩弁護士が後輩の面倒を見る土壌が残っており、新人に対する研修も充実しています。僕も諸先輩方から受けた恩を後輩たちに返していけたらと考えています。

弁護士として働くこと

　依頼者は、ときには生死にかかわるようなトラブルに悩み、その解決を求めて涙ながらに相談にいらっしゃいます。事件の相手方の怒りの矛先が弁護士に向くこともあります。そのような依頼者や相手方と正面から向き合うのが僕たちの仕事であり、その精神的な負荷は決して小さくはありません。
　また、事務所の営業時間中は、電話対応、期日への出頭、打ち合わせ、弁護士会の会務等のスケジュールが目白押しで、わずかな隙間時間を使ったり、時には休日を返上したりして書面を起案する必要があるため、常に時間に追われているというのが実情です。
　そんな大変な仕事ではありますが、弁護士は、法律の知識だけでなく、人間力を武器に、悩みを抱えている方々を手助けすることができる素晴らしい仕事だと思います。
　そして、僕自身も、大学卒業後のブランク期間や受験期間中に、辛く、苦しい経験をたくさんしましたが、そのような経験のある人間の方が、弁護士に向いているのかもしれないと、今では思っています。

僕にとっての金沢大学法科大学院

　大学卒業後にブランクがあった僕にとって、金沢大学法科大学院はレールに戻るきっかけとなった大切な場所でした。
　一緒に勉強に励み切磋琢磨できるクラスメイトや、親身になって応援してくださる先生方がいなければ、もともと怠惰な性格の僕が司法試験に合格することはできなかったと思います。
　また、僕は、在学中、日本学生支援機構の奨学金制度を利用して授業料や生活費を捻出していましたが、現在は、「法学研究科法務専攻奨学金」も創設され、経済的支援も更に充実しているようです。
　僕のように夢を一度諦めかけた方やブランクがある方も、是非、金沢大学法科大学院で勉強に励んで、夢をつかみ取っていただけたらと思います。